里親になるのに保証人が必要⁈ その理由は「犬のため」の画像1

保護犬の譲渡を申し込んだところ「保証人が必要」と言われて戸惑った、という投稿がときおり見られます。「保証人がいないと飼えないの?」「信用されていないということ?」とマイナスイメージを抱く方もいるでしょう。
保護団体が保証人を求めるのには、経験則に基づいた実情的な理由があります。せっかく幸せな第二の人生を歩んでほしいと譲渡した保護犬が、もしも再び路頭に迷ったら……。そのリスクを最小限に抑えるための方法として採用されているのが「保証人」なのです。
保証人が必要な理由と、必要ないケース、そして一人暮らし・高齢者・加療中の方が準備しておくとよい事柄を解説します。

万が一はいつ起きるかわからない

保護犬の里親条件に保証人が設けられている最大の理由は、飼い主が突然、犬の世話を続けられなくなる事態への備えです。 飼い主の入院・死亡・介護施設への入所——こうした予期しない出来事は、どんな飼い主にも起こりえます。そんな「どうしても世話をすることができなくなった」とき、犬の行き先が決まっていないと保健所に持ち込まれるか、最悪の場合は放置・遺棄されることになります。 動物愛護団体への飼育放棄依頼を分析した調査(濱野・中村、2018年)では、飼育放棄の理由のうち最も多かったのは「飼い主の病気・傷病等」で、全体の32.21%を占めていました。保証人(または「緊急時引き受け人」と呼ぶ団体もあります)は、この「もしも」に備えるためのセーフティネットであり、信頼されていないからという理由で設定されているわけではないのです。そのため、団体によっては「保証人は必ずしも身内でなくてもよい」とするケースもあります。

保証人がいない場合に、起きるリスク

では、保証人(緊急時引受人)がいない場合、どのようなことが起きるのでしょうか。

独居者が突然入院
一人暮らしの飼い主が緊急入院した際、犬が自宅に1週間以上取り残されていたことに、近所の人が吠え声で気づいたという事例があったそうです。冬であれば低体温症、夏なら熱中症の危険性がある状況でした。

飼い主が亡くなった
飼い主が孤独死した住居で、複数の犬や猫が取り残されていたという事例も各地で報告されています。親族が引き取れない(遠方・ペット不可物件・体調不良)ケースが多く、最終的に保護団体や自治体が対応することになりがちです。

施設入所
介護施設や高齢者住宅(サ高住)の多くはペット同居を認めていません。飼い主が施設入所を決めた際に犬の行き先が見つからず、やむなく保健所に持ち込むケースが毎年後を絶ちません。

保証人の定義とは

保証人(緊急時引き受け人)に求められる内容は団体によって異なりますが、おおむね以下の点が共通しています。

  • 飼い主が飼えなくなった際に、犬を引き取って世話をする意思があること
  • 身分証明書のコピー等、本人確認ができること
  • 書面(誓約書・同意書)への署名または押印

保護団体の中には、独居・高齢者世帯に関しては連帯保証人を必須としており、「保証人には本人同様の責務が生じる」と明示するところもあります。保証人の署名入り書類の提出を求めるところもあります。

一方、「緊急時引き受け人」という言葉を使う団体では、保証人よりも柔軟な設定になっていることもあります。「いざというときに犬を預かってくれる人の名前と連絡先を書いておいてほしい」というレベルの確認が多いようです。
また、一般財団法人犬猫生活福祉財団では、単身世帯の方には「万が一の時の保証人が必要」としつつも、同棲カップルや既婚の方についても「緊急時の引き受け人を決めておくこと」を求めています。保証人制度は「一人暮らしだけの問題」ではなく、すべての里親に求められる終生飼養の担保であると言えるでしょう。

 

保証人を求められても「不信感を持たれている」わけではない

どんなに犬を可愛がっていても、病気・事故・老いといったトラブルがいつ起きるかはわかりません。
保証人の要件は、あなたという人間を信用していないのではなく、「未来に何が起きても、この犬が守られる仕組みを一緒に作りたい」と捉える方が適切でしょう。

保証人が必要ないケース

なお、すべての団体・施設が保証人を必須としているわけではありません。

・保健所・動物愛護センター経由の譲渡
自治体が運営する施設では「譲渡講習の受講」「飼育環境の確認」「書面での誓約」が中心で、保証人を必須としないところも多くあります。すべての施設というわけではないので、「年齢制限(65歳)を超えるか、単身世帯の場合は代替世話人の同意が必要」(さいたま市)、「単身者や高齢者の場合は条件を満たす後見人(代替飼養者)の選定が必要」(川崎市)とする自治体もあるため、最寄りの施設の条件をよく調べてみましょう。


・ネット主体のマッチングサービス
個人間の里親募集では、保証人の設定がない場合がほとんどです。ただし、虐待や遺棄を防止するための方策を取り入れつつあるサービスも増えていること、譲渡時の個人情報保護が万全かをしっかり見極める必要があります。


・条件緩和型の保護団体
譲渡施設の中には「原則として条件を設けない」方針をとる団体も存在します。専門家(獣医師・トリマー・ドッグトレーナー)による生活サポートを前提として、条件よりも継続的なサポートで安全を担保するアプローチです。

一人暮らし・高齢者・加療中でも里親になるには?

保証人がいないからといって「保護犬は迎えられない」と最初から諦める必要はありません。保証人という「人的なセーフティネット」を整えることが難しい状況でも、犬との生活を諦めなくてもよい選択肢もあるので、その一例をご紹介します。

1. ペット後見の仕組みを活用する
「ペット後見互助会とものわ」(NPO法人 人と動物の共生センター運営)は、飼い主が入院・死亡・要介護状態になった際に、ペットを引き取って終生飼育または譲渡先を探すことを引き受ける互助会です。
岐阜・東京・浜松・鳥取の4拠点に飼育施設があり、年齢制限なし・持病があっても入会可能です。全国から申し込めます。
費用の目安:入会金・手数料10万円(一時金)+月会費1,000円/頭+終生飼育費100万円〜/頭(10kg未満の犬猫)
保護団体に「保証人は立てられないが、ペット後見に加入している」と伝えることで、審査に柔軟に対応してもらえる場合があります。

2. ペットヘルプカードを持ち歩く
もっとも手軽な方法としては、「財布の中に犬の情報と連絡先を書いたカード」を入れておく習慣が推奨されています。運転免許証などと同じように、常に身に着けておくことで、急な搬送・入院といった場合でも、医療関係者が「この人は犬を飼っている」と把握し、関係者に連絡を入れられる仕組みです。

3. 日常的に頼れるペット専門家やコミュニティとの関係を築く
普段からペットホテルやペットシッター、獣医師と顔なじみになっておくことは、緊急時の一時預かり先を作ることにつながります。また、保護犬の同窓会や犬種コミュニティに参加して、「いざとなったら預かり合える」関係を作っておくことも有効です。一方的に頼む状態にならないよう、日頃から助け合いの姿勢で関わることが大切です。

4. ペット情報をまとめた「緊急ファイル」を作る
入院中に代わりに世話をしてもらう場合に備え、以下の情報を紙でまとめておくことも推奨されています。

  1. 犬の名前・生年月日・犬種・体重
  2. ワクチン接種歴・持病・かかりつけ医の連絡先
  3. フードの種類と量・アレルギーの有無
  4. マイクロチップ登録番号
  5. 保険証(ペット保険)の情報

電子データはパスワードが分からなくなるリスクがあるため、紙での保管がおすすめです。

5.信頼できるかかりつけ動物病院に相談する
「自分に万が一のことがあったときは、一時的にお願いできますか」と動物病院に相談しておくことで、緊急時の連絡先になってもらえる場合があります。日常的な信頼関係が前提になりますが、こうした相談に乗ってくれる病院は増えています。

6. 保護団体との継続的な関係を作る
ボランティアとして保護団体の活動に参加し、信頼関係を築いておくことで、審査の際に柔軟な対応を受けやすくなることがあります。

保証人は「犬の終生福祉」に有益な制度

保護犬を迎えるということは、「この子の命を、自分の力だけで最後まで守ります」と誓うことです。しかし現実には、人間は一人ではできないことや、想定外のトラブルがたくさんあります。
保証人という仕組みは、その誓いを一人から複数人へと広げ、犬のセーフティネットを厚くするための装置。「信用されていない」のではなく、「一緒にこの命を守ってほしい」という申し出だと受け取れば、審査のハードルは少し低く感じられるのではないでしょうか。
保証人を立てることが難しい状況でも、制度やコミュニティ、専門家との関係を通じて、代わりのセーフティネットを作ることはできます。「自分は譲渡の条件に合わない」と諦める前に、他に取れる選択肢を確認してみることをおすすめします。

Q1. 保証人がいないと、保護犬は絶対に迎えられませんか?
A. そんなことはありません。保証人を必須条件としない保護団体・動物愛護センターも多くあります。また、ペット後見サービスに加入するなど、人の代わりに「制度」でセーフティネットを担保する方法もあります。まずは複数の団体に問い合わせてみることをお勧めします。

Q2. 保証人を求められたのは、私が信用されていないからですか?
A. そうではありません。保証人の要件は、あなたへの不信感ではなく、「将来の不測の事態に備えて犬を守る仕組みを作りたい」という団体の姿勢。保証人を求めることは、すべての里親候補者への標準的な安全確認です。

Q3. 保証人には何が求められますか?
A. 団体によって異なりますが、一般的には「飼い主が飼えなくなった際に犬を引き取る意思があること」「身分証明書のコピー等による本人確認」「書面への署名・押印」が求められます。一般的には、収入証明や保証人の年収確認を求められることはありません。

Q4. 一人暮らしで保証人を頼める人がいない場合、どうすればよいですか?
A. 民間のペット後見互助会への加入、保証人不要の団体・行政施設への申し込み、日常的に付き合いのある動物病院や地域コミュニティとの関係作りなど、複数の手段があります。「任せられる特定の人がいない」状況でも、制度や専門家を活用することでセーフティネットを整えることができます。

Q5. 高齢者や加療中の方は、そもそも里親になれますか?
A. 団体によって条件は異なります。年齢制限を設けない団体もあれば、「60歳以上は子犬不可、成犬なら可」という団体もあります。加療中であっても、「犬の世話を継続できる状態か」「万が一の際の引き受け先があるか」を確認した上で受け入れる団体も存在します。まずは状況を正直に伝えて相談してみましょう。

Q6.  保護犬を迎えた後に保証人が亡くなったり、引き受けを断られた場合はどうなりますか?
A. 保証人の状況が変わった場合は、速やかに団体に連絡し、新しい保証人・緊急時引き受け先を再設定することが必要です。多くの団体では譲渡後も継続的なサポートや定期報告を義務付けているため、こうした変化はその関係の中で相談できます。放置していると契約違反と見なされる場合もあるため、変化が生じたら早めに動くことが大切です。