保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像1

「犬を飼いたい」と思ったとき、あなたが最初に考えるのはどこですか?

ペットショップの可愛い子犬を思い浮かべた方は、少なくないはず。ガラスのケースの向こうで無邪気にはしゃぐ姿に、心を動かされた人も多いでしょう。
でも、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてほしいのです。その子犬が「そこにいる理由」を。
日本では今この瞬間も、家族を待っている犬たちがいます。そして、家族に出会えないまま殺処分される犬たちがいます。この記事では、保護犬が生まれる社会の背景と、その現実を変えるために私たち一人ひとりができることを考えていきます。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像2

そもそも「保護犬」とは?

保護犬とは、さまざまな事情から飼い主を失い、行政(動物愛護センター・保健所)や民間の保護団体に保護されている犬のことです。野犬や迷い犬として収容された子、飼い主に捨てられた子、繁殖業者から救出された子……。その経緯はそれぞれちがいます。
「性格に問題があるから捨てられた」「人間不信で扱いにくいのでは?」というイメージを持つ方もいますが、それは大きな誤解です。多くの保護犬は、人間の都合によって生み出された社会的な被害者でもあります。彼らは問題を起こしたわけでなく、ただ「不運な環境に置かれた」だけなのです。
さらには日本特有の事情から、保護すらされず死にゆく犬も多いという現実も、ぜひ知ってください。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像3

保護犬が生まれる4つの背景

① ペットショップ中心の流通とパピーミル問題
日本のペット流通は、今もペットショップ経由が主流です。その背景にあるのが「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれる存在。ニーズに応えるため、人気の高い犬種を中心に大量繁殖させる業者のことで、生まれた子犬は商品として流通します。また、悪徳な業者の中には、狭いケージ・不衛生な環境で繁殖させ続けるものもいます。
動物愛護法によって、販売できるのは生後8週(56日)を過ぎた犬と定められていますが、ショーウィンドウに並んだ子犬に求められる「売れ期」は、わずか数週間。人気が集中するタイミングを外した子は「売れ残り」として値引きされたり、別の店に回され、それでも引き取り手がなければ繁殖用に流れていきます。さらに動物愛護管理法が改正され、行政が民間業者からの犬猫の引き取りを拒否できるようになったことから、餓死や病死によって“殺され”たり、引き取り業者に流される犬も増えました。こうした「見えない殺処分(流通過程の死)」は、環境省の統計にも現れません

② 飼い主による飼育放棄
保健所への引き取り数のうち、1割程度は飼い主による直接の持ち込みと言われています。理由は「高齢・病気で世話できなくなった」「引越しで飼えなくなった」「思っていたより手がかかる」など。命を迎え入れたにも関わらず、人間の都合で手放される犬たちは後を絶ちません。

③ 無計画な繁殖と多頭飼育崩壊
避妊・去勢手術を行わないまま複数頭を飼い続けた結果、手に負えない数に増えてしまう「多頭飼育崩壊」。2024年には全国で800件以上確認され、官民問わず保護施設へと保護されています。

④野犬が繁殖している地域の存在
茨城県の一部など、野犬が増え続けている地域もわずかながら存在します。野犬は人間に捕まらないよう生活し繁殖し続けるため、避妊手術によって繁殖を抑制する「蛇口閉め活動」もなかなか進まない現状も。また、悪質なハンターが素質がないと思われる猟犬を山に遺棄する例も後を絶ちません。

⑤繁殖引退犬の存在
①で紹介したような悪質な状況ではなくとも、ブリーダーにとって繁殖を引退する犬の行き場は悩みの一つ。繁殖適齢期はメスで2~5才、オスで2~7才程度。出産の負担を考えると、その年齢より若くても引退せざるを得ない犬もいます。小型犬の場合は平均寿命まで10年以上飼い続けることとなり、ブリーダーの負担が大きくなってしまうことから、比較的若い(6才程度)で保護犬として譲渡される犬も少なくありません。アニフェア(anifare)のように、そういった引退犬を中心に保護している団体もあります。

⑥ 譲渡・支援の仕組みが追いつかない
保護施設は限られた資金・人員・スペースで運営しているため、生涯にわたって面倒を見ることは困難です。重度のトラウマを持つ犬や、持病のある子を長期にわたって支援する余力がなく、やむを得ず殺処分に頼らざるを得ないケースも存在します。また、公的施設の保護や譲渡の方針も若干異なるため、殺処分0の自治体もあれば、毎年数百匹以上処分する自治体もあるなど、場所によって殺処分割合には大きな差が生まれています。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像4
※写真はイメージです

数字に現れない、日本の現状

20年前の日本では、年間15万頭以上の犬が殺処分されていました。それが今は2,000頭以下にまで減少しているのは、保護団体、行政、里親などあらゆる人の取り組みと、それらの積み重ねにほかなりません。しかし、それでもまだ毎日5頭以上の命が失われている上、統計に現れない「見えない殺処分(流通過程の死)」も含めれば、実は命を奪われる犬の総数はさらに2万匹以上いるとする研究結果もあります。
そもそも、「見えない殺処分(流通過程の死)」が万単位で生じるのは、世界でも例がありません。それは「動物はペットショップで買うもの」という認識が日本に普及し、商品として「生まされる」「生まれてきた」動物が、あまりにも多いことが原因です。
しかし世界的な潮流は、欧米を中心に「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の考えのもと、ペットショップやブリーダーの存在自体が特殊になりつつあり、犬と出会う手段自体が異なります。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像5

世界は「買う」をやめつつある

欧米では、ペットショップでの生体販売規制が急速に進んでいます。

ニューヨーク州(アメリカ):2024年12月、ペットショップでの犬・猫・ウサギの販売を禁止
フランス:2024年1月から、動物店での犬猫販売を全面禁止
カリフォルニア州:2019年以降、ブリーダー由来の犬猫のペットショップ店頭販売を事実上禁止
イングランド(イギリス):2020年に第三者による子犬・子猫の販売を禁止

これらの国では「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という考え方が社会に浸透し、犬は「買うもの」ではなく「出会うもの」という意識が定着しつつあります。
一方、日本はこの流れから大きく遅れ、マイクロチップ装着の義務化など法整備が進む一方でペットショップにおける生体販売は現在も続いています。欧米に比べると、一般市民の間でも「アニマルウェルフェア」の考えがまだ十分に浸透していないのが現状です。しかし、日本でも少しずつアニフェア(anifare)のような「売らずに譲る施設」が現れ始め、意識が変化し始めています。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像6

「出会う」という選択が、命と社会を変える

保護犬を家族に迎えることには、具体的なメリットがあります。

✦ プロによるマッチング
保護団体の中には、家族構成・ライフスタイル・住環境を踏まえて犬との相性を真剣に考えてくれるところもあります。そんな団体を選べば、「飼いたい犬」ではなく「一緒に幸せになれる犬」と出会える確率が高まります。

✦ 性格が分かっている成犬が多い
多くの保護犬は成犬です。「どんな性格に育つか分からない」「生えかわりの歯がむずがゆく、あちこちを囓ってしまう」といった子犬育ての不安がなく、穏やかな共同生活をスタートしやすいのが特長です。

✦ 避妊・去勢手術が済んでいる
多くの場合は譲渡前に手術を済ませているため、手間とコスト(相場2万〜4.5万円)の節約になります。

✦ 命を救うことができる
そして何より——あなたが選ぶことで、1頭の命がつながります。それは数字ではなく、目の前で毎日笑顔になっていく、たった1頭の生きた命です。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像7

今日から、私たちができること

「保護犬を迎えるのは難しそう」「今すぐ飼える環境にない」という方も、できることはたくさんあります。

① 知る・伝える
まずは現状を知り、SNSのシェアなどを通じて情報を広めること。1つのシェアが1頭の命を救うきっかけになることがあります。保護団体のInstagramをフォローするだけでも、里親探しの応援につながります。

② 寄付・物資支援
金銭的な寄付はもちろん、フード・ペットシーツといった物資支援を受け付けている保護団体もあります。Amazonほしい物リストを公開している団体もあるので、手軽に始めたいという方は確認してみては?

③ 一時預かりボランティア
施設のスペース不足を補う「フォスター(一時預かり)」は、次の里親が見つかるまでの間、犬を自宅で世話するボランティア。犬を飼い慣れている人におすすめの協力方法です。

④ いつか迎える準備をする
「今はまだ環境が整っていない」という方は、譲渡会の情報を常にチェックすることから始めてみては? ふとした瞬間に、運命の出会いが待っているかもしれません。

保護犬はなぜ消えない? 私たちができる、「買う」から「出会う」へのシフトの画像8

「出会う」が当たり前になる社会へ

犬は「商品」ではなく、ひとつの命。 値段がつき、ショーウィンドウに並べられ、売れ残れば処分される——そんな在り方を当然のこととして受け入れてきた社会が、今少しずつ変わろうとしています。
ヨーロッパで始まったその波は、きっと日本にも来ます。いや、もうすでに、あなたのような人が気づき始めているという意味では、すでに来ています。
「買う」のではなく、「出会う」。 その一歩が、命をつなぐ社会の第一歩になります。

Q.殺処分をなくすために、私たちができることはなんですか。
A.アニマルウェルフェアを理解し、犬を「買う」という意識を捨て、「出会う」と考え方へとシフトすることです。命を奪われかけている犬と出会い、家族に迎えることで、少しずつ殺処分される犬は減るかもしれません。

Q.なぜそれほど命を奪われたり、譲渡に出される犬が多いのですか。
流行の犬種を追い求めたり、命を「モノ」として衝動買いしたりする消費行動が、裏側の無理な繁殖サイクルを支えることにもつながっています。結局のところ、供給があるのは需要があるからと考え、安易にペットショップ等で購入することは避けましょう。


「この記事が、誰かと1匹の運命を変えるきっかけになりますように。」