
トイレをいつまで経っても覚えない、ごはんを食べない、夜中や留守中に鳴き続ける——。「こんなはずじゃなかった」と、手放すことを考えてしまう瞬間もあるかも……。
でもちょっと待って。少しのコツで問題行動が治るかもしれません。
保護犬との暮らしには、ペットショップで迎えた犬とは少し違う「慣らし期間」があるほか、過去の環境や経験が行動となって出てしまうこともあります。そんなとき、「相談できる場所」があることで大きな安心材料になるはず。実は、自治体・民間の保護団体の中には、「迎えた後」の相談を想定した窓口を設けているところが増えてきています。そんな「譲渡後の相談先」についてご紹介します。
「譲渡後の相談」が必要なのはどんなとき?
環境省の調査(令和元年度)では、多頭飼育崩壊の事例において飼い主が問題を認識しながらも誰にも相談できないまま悪化したケースが多数報告されています。「困ったらすぐ相談できる場」が身近にあることが、犬にとっても飼い主にとっても重要なのです。
保護犬が新しい環境に慣れるまで、一般的に数週間から数ヶ月かかるとされています。臆病な子や人間不信に陥っているこの場合は、年単位でかかることもあり得ます。その慣らし期間に、恐怖や不安を感じたことを起因として、問題行動が起きてしまうことがあります。また、「吠えたら構ってくれた」といった誤った学習をしてしまい、悪気のない問題行動が定着してしまうこともあります。
具体的な相談例
「譲渡後の相談」としてよくあげられる内容をまとめてみました。
しつけ・行動に関する相談
吠え癖、噛み癖、トイレの失敗、リードを引っ張る、来客に飛びつくなど。行動の背景にある「過去の環境」を理解したうえでアドバイスしてもらえるかどうかが、その後の解決に直結します。ただ楽しくてやっているのか、それとも恐怖心からその行動に出てしまうのかによって、取るべきアプローチはまったく変わるからです。
生活慣れに関する相談
新しい家や家族への慣れ方、食欲の低下、引きこもりや過度な警戒など。とくに成犬・シニア犬の場合は「保護前の生活習慣」が残っていることが多く、それまでの暮らしを想像することが欠かせません。
健康に関する相談
迎えてすぐに体調が急変した、推定年齢から想定されるシニア症状が出てきた、食欲がいつまでも戻らないといった体調面に関するお悩みです。これはかかりつけ動物病院の受診が基本ですが、「受診前の判断」の参考に保護団体や自治体窓口を使うこともできます。
飼育困難に関する相談
家族や本人にアレルギーが発覚した、転勤などに伴う引越し先がペット不可、家族が病気になったなど。アニフェアをはじめ一部の団体では「飼えなくなった場合の相談」も受け付けています。
相談先①自治体が設ける窓口
都道府県や市区町村が運営する動物愛護センター・動物管理センターでは、常に里親を募集していると同時に、譲渡後の飼育相談・しつけ相談に対応しています。センターから譲渡された犬ではなくても、マイクロチップの書き換え手続きや市区町村への届け出の方法といった、行政手続きに関する問い合わせに対応してくれるところも多いようです。
東京都動物愛護相談センター(ワンニャンとうきょう)
東京都が運営する「東京都動物愛護相談センター」(世田谷区、多摩支所)では、ペットに関する相談を広く受け付けており、新しい飼い主探しの助言や協力をお願いできるボランティア団体の紹介も行っています。
飼い方(適正飼養)に関する相談は地域別担当となっており、23区部は各区保健所、多摩地域(八王子市・町田市を除く)は多摩支所が担当しています。任意のタイミングでの相談のほか、センターから譲渡を受けた里親は1年以内に飼養状況について報告する制度が設けられており、継続的に行政が関与するシステムとなっています。
また、東京都では動物愛護推進員という制度を設けており、動物愛護と適正飼養の普及啓発を行うボランティアが、ペットの飼い方やしつけ方の相談に応ずる活動も実施しています。
東京都動物愛護相談センター
https://wannyan.metro.tokyo.lg.jp/
大阪府動物愛護管理センター(アニマルハーモニー大阪)
大阪府における犬猫に関する各種相談を電話で受け付けています。
さらに、大阪市では「ワンニャン教室」と呼ばれる犬と猫の譲渡会・適正飼養講習会・飼い方相談を昭和57年から実施。しつけ教室は複数日にわたり、じっくりとしつけ方や防災について学ぶことができます。犬猫のほか、うさぎなどの小動物に特化したイベントも開催しています。
大阪府動物愛護管理センター
https://www.pref.osaka.lg.jp/o120200/doaicenter/doaicenter/index.html
福岡県動物愛護センター
犬猫の譲渡・相談・しつけ教室まで幅広いサービスを提供し、公式サイトは「飼育相談について」「犬のしつけ方教室」「猫が幸せに暮らすためのにゃんにゃんセミナー」「マイクロチップの装着と登録」など、譲渡後の飼い主が参照できるページが充実しています。
「譲渡された犬猫たちの話」というコーナーでは、新しい家族のもとへ渡った犬猫のその後を紹介しており、飼い主と施設の譲渡後のつながりを大切にしていることが伝わります。
公益財団法人 福岡県動物愛護センター
https://www.zaidan-fukuoka-douai.or.jp/
(福岡市内は「わんにゃんよかネット」福岡市動物愛護管理センター:https://wannyan.city.fukuoka.lg.jp/)
豊田市動物愛護センター(愛知県)
愛知県の豊田市動物愛護センターは、2015年に鞍ケ池公園内に開設された施設でしつけ方教室や飼い方講座など様々なイベントを実施しています。
保護犬の譲渡は、センターが開催するしつけ方教室や飼い方講座を受講することを譲渡条件のひとつとしており、「引き渡して終わり」ではなく、講座への参加を通じた学びのサポートがあります。
豊田市動物愛護センター
https://www.city.toyota.aichi.jp/shisetsu/shisetsusonota/aigocenter/index.html
自治体相談窓口を利用する際の注意点
自治体ごとに対応できる内容や部署が異なるほか、電話や当日の即日対応はしないところもあるため、注意が必要です。東京都の場合、適正飼養に関する相談は各区保健所が窓口になるケースもあるため、まずは最寄りの自治体サイトで確認するか、動物愛護センターに電話で問い合わせるのがおすすめです。
また、環境省が運営する「動物の愛護と適切な管理」のポータルサイトでは、全国の動物愛護センターへのリンクや各種情報が集約されており、最寄りの窓口を探すきっかけになります。
相談先②民間団体の相談窓口
民間の保護団体が設けるサポート体制も充実してきています。例えば民間団体のひとつ、アニフェア(anifare)では、民間団体としては先駆け的な手厚い「譲渡後サポート」の仕組みを構築していることで知られています。
アニフェアの相談窓口——ドッグトレーナー資格者が対応
飼育に関する様々な相談事に対し、家庭や環境、保護に至った経緯といった事情を鑑みながら、ドッグトレーナーの資格を持ったアドバイザーが回答してくれます。窓口はLINEと電話、そして匿名でも対応しているため、気軽に相談できるのがメリットです。
サイトでは、以下のような相談内容が例としてあげられています。
・家族にアレルギーが発覚した
・留守中のいたずらがひどい
・散歩中にほかの犬に吠えてしまう
「相談先」が飼育放棄を防ぐ
ペットの飼育放棄は突然起きるわけではなく、「困っているけれど誰にも言えない」「どうにかしようかと思っていたけど手に負えなくなった」という状態が続いた末に起きるケースがほとんど。「責任感がない」と責められることを恐れて、誰にも相談できないままということも少なくありません。
早い段階で「困っている」という声を上げられる環境があること——それが、飼い主の孤立、ひいては犬の幸せを守ることにつながります。
自治体の窓口でも、民間団体でも、「相談することへの遠慮」はいりません。むしろ、相談することそのものが、犬との暮らしを長続きさせるための大切な行動なのです。
保護犬を迎える前から「相談先」を知っておく
アレルギーの発覚や突然の転勤・病気など、人生には予想もつかないことがままあります。そんなときに備えて、保護犬を迎える前に「何かあったときに相談できる場所」を知っておくこと、万が一の際にペットを任せられる先(個人、団体問わず)を決めておくと安心です。
どこの保護団体から迎えるかを調べる際も、団体が「譲渡後の相談」を受け付けているか、最寄りの動物病院と相性が合わなかった際に紹介してもらえる病院があるかなどを把握しておくと、譲渡後のお困りごとが少なくなります。
Q1. 保護犬を迎えた後、飼育に困ったときにまず連絡すべき場所はどこですか?
A. まずは「迎え元の団体」に連絡しましょう。自治体のセンターから迎えた場合はその施設の相談窓口、民間団体から迎えた場合は、団体のスタッフへ連絡しましょう。アニフェアの場合はドッグトレーナー資格を持つアドバイザーへの飼育相談窓口が設けられています。また、最寄りの自治体の動物愛護センターも一般的に相談を受け付けています。
Q2. 自治体の動物愛護センターでは、具体的にどんな相談ができますか?
A. 施設によって異なりますが、主に飼い方・しつけに関する相談、しつけ方教室や講習会への案内、飼えなくなった場合の対処相談、ほかのボランティア団体の紹介などが対応可能です。東京都動物愛護相談センターでは適正飼養に関する相談(地域により担当が区保健所に分かれる)、大阪市では「ワンニャン教室」として飼い方相談を実施、福岡県では飼育相談としつけ教室の両方を設けています。
Q3. アニフェア(anifare)の譲渡後サポートはどのような内容ですか?
A. アニフェアでは「飼育相談窓口」を設けており、ドッグトレーナーの資格を持つアドバイザーが飼育の困りごとに対応しています。また、譲渡の際はサポート動物病院にて獣医師が健康診断と処置を行い、健康情報を正確に里親に共有する仕組みを設けているほか、それでも飼育が困難になった場合の相談窓口も設けています。
Q4. 自治体センターとアニフェアのサポートの違いは何ですか?
A. 自治体センターは「公的窓口」として税金で運営されており、誰でも利用でき、地域の飼い主全般が対象です。基本的に無料で利用できますが、担当部署が細かく分かれていることや、対応できる内容に制限がある場合があります。アニフェアは民間団体として、資格を持つスタッフや獣医師と連携した専門的なサービスを提供していますが、主にアニフェアからの譲渡経験者が主な対象です。両者は補完的な存在であり、状況に応じて使い分けることが重要です。
Q5. 飼育が難しくなってしまった場合、相談できる場所はありますか?
A. あります。アニフェアでは「飼えなくなってお困りの方へ」という専用相談ページを設けており、やむを得ない事情でペットを手放さなければならなくなった場合のサポートを行っています。また、東京都動物愛護相談センターでは、「犬や猫を飼い続けることが困難な場合の相談のみ受付」する窓口があります。
Q6. 相談先を事前に決めておく必要はありますか?
A. 強くおすすめします。「困ったとき」に初めて相談先を探すと、どこに連絡すべきかわからず、問題が深刻化してしまうことがあります。保護犬を迎える前に①迎え元団体の連絡先・相談窓口②最寄りの動物愛護センターの電話番号③かかりつけ動物病院——この3つを把握しておくだけで大きく変わります。環境省のポータルサイトでは全国の動物愛護センター情報を調べることができます。
Q7. しつけや行動の問題について、より専門的な相談が必要な場合はどうすればいいですか?
A. まず迎え元の団体や動物愛護センターに相談し、専門家の紹介を依頼するのが効果的です。アニフェアではドッグトレーナー資格者が対応しています。自治体によっては、しつけ方教室(福岡県・豊田市など)や、米国獣医行動学専門医との連携(神奈川県動物愛護センターなど)を行っているところもあります。かかりつけの動物病院で行動専門医を紹介してもらうことも一つの方法です。問題行動は適切なタイミングで専門家に相談することで、改善できるケースが多くあります。









