高い寄付金を渡せば、優先譲渡されるって本当?← No!【審査で確認される項目について深掘り】の画像1

保護犬の譲渡費用を調べると、団体によって譲渡費用が大きく違うことに疑問を抱かれる方もいるかもしれません。医療費実費以外は無料のところもあれば、6万円以上かかるところもある。さらに任意の寄付金をいくら支払えばいいのか……。「お金を多く払えば、審査に通りやすくなる?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言えば、譲渡金額と里親の優先順位は関係ありません。
譲渡費用と里親審査は、まったく別の仕組みですが、連動していると勘違いしている方も多いようです。そこで、この記事では費用と審査の違いを整理しながら、審査では実際に見る項目について深掘りしていきます。

「譲渡費用」とは

保護犬は、保健所や動物愛護センター、NPO法人などが一時的に預かり、里親につなぐ橋渡しをしています。その間、犬にはワクチン接種・不妊去勢手術・健康診断・マイクロチップ装着・フィラリア予防などの医療ケアが施されます。譲渡費用とは、これらの実費を次の飼い主と分かち合うための費用です。

譲渡費用の相場

団体や施設の種類によって、おおよその目安は次のとおりです。

・保健所・動物愛護センター
無料〜3万円程度
(マイクロチップ登録などの手数料実費のみのケースが多い)


・NPO法人・任意団体の保護グループ
1万円〜10万円程度
(避妊手術の実費を求められる場合、犬の性別によっても金額に差が出ることがある)


・一部の大規模団体や遠距離輸送を含む場合
10万円以上になることもある
(寄付金主体の運営ではなく、人件費や光熱費をはじめとする維持費を譲渡費用に含む団体の場合、譲渡費用が高額になりがち)

東京都の動物愛護相談センターでは譲渡費用は無料、神奈川県では犬のオスが4,275円・メスが8,140円(マイクロチップ費用等の実費)というように、自治体ごとにも費用に差があります。
NPO法人や社団法人をはじめとする民間団体では、ワクチン・手術・健診等の実費に加え、施設運営費や活動継続のための費用や、任意の寄付金が上乗せされることもあります。

寄付金額が高ければ優先してもらえるわけではない

保護施設・団体の多くは、費用を多く払ったから審査に通る、スムーズに引き取れるという仕組みをとっていません。
そもそも保護活動の目的は「犬を売ること」ではなく、「犬の命を適切な家庭につなぐこと」です。里親になれるかどうかは、費用の多寡ではなく、審査の内容によって決まります。
なお、譲渡後も継続的な費用を請求する団体には注意が必要です。不安な場合は、費用の根拠として医療明細・領収書を提示できるかどうかや、従業員(有償スタッフ)がどれくらいいるか、これまでに何頭の譲渡実績があるか、譲渡後の不安をどれくらいサポートしてくれるかを確認すると良いでしょう。

里親審査で見る事柄は?

金額の多寡で判断されないとしたら、実際に審査で見られるのはどんなことでしょうか。環境・人・犬の幸せの担保の3つの見地から見ていきます。

① 住居・環境の確認
ほぼすべての団体が確認するのは、犬が安全に暮らせる住環境かどうかです。

・ペット飼育が許可されている住居かどうか
賃貸の場合は契約書や管理会社の許可証明が必要なことも。

・室内飼育に十分なスペースがあるか
20㎡以下やワンルーム不可とする団体もあります。

・外飼いをしない
脱走・感染症・事故・盗難リスクを鑑みて、多くの団体が外飼いを認めていません。

・脱走防止の設備があるか
団体(とくに民間団体)によっては、応募後にスタッフが自宅を訪問して飼育環境を直接確認する自宅訪問審査を実施することもあります。

② 家族・生活の確認
次に見られるのは、里親となる人となりや家族状況です。譲渡後に家族トラブルや急病などで飼いきれなくなり、再び保護犬になることを防ぐためです。

・家族全員の同意が得られているか
本人だけが希望し、家族が反対している状態では不可。

・年齢
20歳以上・65歳以下を条件とする団体が多いです。子犬・若年齢・大型犬・猟犬の場合は、散歩や世話に体力を要するため60歳以上を断るケースもあります。

・犬の世話を担える時間があるか
一日にどれくらい留守番させるかを確認する団体は少なからずあります。留守番や1人になることを嫌う犬の場合、長時間・頻回の留守番をする人は断られるケースもあります。

・同居家族が動物アレルギーを持っていないか

・先住ペットがいる場合、その状況や相性

・職業や収入

③ 飼育に関する約束
再び保護犬になることを防ぐために、里親希望者に今後の飼育についての誓約事項を求める団体も少なくありません。

・終生飼養
最期まで責任を持って世話をすること
・不妊去勢手術・ワクチン接種・狂犬病予防接種の実施

・マイクロチップの登録

・完全室内飼育の継続

・譲渡後の定期報告への協力
写真の送付、家庭訪問への対応等

これらは誓約書・契約書として書面を交わす団体がほとんどです。

収入証明を求める団体はごくわずか。ただし、経済力の安定は確認される

「収入を確認する団体がある」という話を聞いて、不安に感じる方もいるかもしれません。なぜ収入状況まで確認されるのでしょうか。

収入証明書類の提出を求める団体は少数

応募フォームや面談の中で「年収」「職業」「雇用形態」などを尋ねる団体は、確かに存在します。しかし、源泉徴収票や収入証明書といった書類の提出を義務づけている団体はごく少数です。
多くの団体が確認しているのは「収入が安定しているか」という大まかな内容であり、具体的な金額の多寡ではありません。年収が高いほど審査に有利というわけではなく、「この犬が医療費や飼育費に困ることなく暮らせるだけの経済的余裕があるか」 という点を確認しているのです。

経済状況を確認する理由

では、なぜ団体は収入について尋ねるのでしょうか。理由は明確です。
犬の飼育には、毎年それなりのお金がかかります。病気やケガの際の医療費は特に予測しにくく、予想外の出費が飼育放棄や多頭飼育崩壊の引き金になることがあります。保護団体が経済力を確認するのは、「困ったときに犬を手放すことにならないか」 を見ているからです。
年収の高低ではなく、「医療費が突然かかっても続けて飼えますか?」という現実的な問いへの答えを確認しているわけです。

犬を飼ったあとの年間コストは40万円以上

では実際、犬を飼うと年間どのくらいかかるのでしょうか。
一例として、アニコム損保が毎年実施している「ペットにかける年間支出調査」(2025年版)では、犬の年間支出の平均は約41.3万円という結果が出ています。内訳は以下のとおりです。

・医療費(治療費)
 89,120円(前年比約11%増)

・フード・おやつ代
 80,029円

・光熱費(飼育に伴う追加分)
 22,273円

・トリミング代
 50,575円

・ワクチン・健康診断等の予防費
 34,024円

・ペット保険料
 44,879円

・交通費
 24,895円

・その他、サプリメント、日用品、首輪、しつけ/トレーニング料など

これらを月換算すると約3.4万円。つまり「月3万円台が継続して支出できるか」が、飼い続けられるひとつの目安になります。
また、これは平均の数字のため、高齢犬・大型犬・持病を持つ犬の場合は医療費がさらに高くなることがあります。繁殖引退犬や保護犬を迎える場合、引き取り直後に歯石除去・避妊去勢手術・各種ワクチン接種をまとめて行う初期費用として、数万円〜十数万円が別途かかることも念頭に置いてください。
収入状況を確認するのは月3〜4万円規模の支出が長期にわたって可能かの判断材料としたいからなのです。

審査に落ちた場合はどうするか

もし審査に通らなかった場合、見直せるポイントがあるかもしれません。

・住居
ペット不可物件の場合は引っ越しや交渉が必要。

・家族の同意
全員の賛成を得てから再度チャレンジ。

・留守番時間
在宅勤務などを活用し、週40時間(一日8時間以上)の留守番が常態化しないように工夫する。

・年齢条件
若い犬ではなく、成犬・シニア犬や活動量の少ない犬種を希望することで、年齢条件が緩和されることも。

なお、団体によって審査基準は大きく異なります。ある団体では断られた条件でも、別の団体では問題ないと判断されることがあります。複数の団体に問い合わせることも選択肢のひとつです。
また、譲渡イベントでは複数の団体と直接話せる機会があるため、自分の状況に合った団体を探しやすいというメリットがあります。

審査の「厳しさ」=犬の幸せを願う気持ち

里親審査の厳しさの背景には、「もう一度、あの子に辛い思いをさせたくない」という保護団体の強い気持ちがあります。
ペットショップで犬を買う場合、こうした審査はありません。
しかし保護犬の多くは、一度は人の都合で生活や飼い主が変わった経験を持ち、心に傷を負っている子も少なくありません。次の家庭では最期まで愛してもらえるよう、団体は真剣に審査をしているのです。
費用を多く払っても審査の通りやすさや優先度には関係ありませんが、「最後まで一緒にいる覚悟」と「その環境が整っているかどうか」を見るために審査があるのです。

 

Q1. 譲渡費用を多く払えば、審査に通りやすくなりますか?
A. なりません。譲渡費用は犬の医療ケアにかかった実費を分かち合うものであり、審査とは無関係です。審査に通るかどうかは、住環境・家族の同意・終生飼養の約束など、飼育条件を満たしているかどうかによって判断されます。

Q2. 収入証明書の提出を求められますか?
A. 団体によって異なりますが、源泉徴収票や収入証明書の提出を必須とする団体は少数です。多くの団体は、職業・雇用形態・家族構成などを記入するアンケートや面談で経済状況を確認する程度です。「年収が高くないと通らない」というわけではなく、安定した収入が見込めるかどうかを確認しています。

Q3. 年収が低いと審査に落ちますか?
A. 「年収○○万円以上」という明確な数値基準を設けている団体はほとんどありません。確認されるのは「飼育を続けられる経済的な安定があるか」という点です。月3〜4万円規模の飼育費・医療費を長期にわたって支出できる見通しがあれば、年収の絶対額より安定性が重視されます。

Q4. 審査で自宅訪問はありますか?
A. 団体によります。特に保護団体・NPO法人では、自宅訪問を審査の一環として実施するところがあります。飼育環境(広さ・脱走防止・室内の状況)を直接確認するためです。保健所・動物愛護センター経由の場合は、訪問なしで書類審査と面談のみというケースも多いです。

Q5. 審査に落ちた理由は教えてもらえますか?
A. 団体によって対応はさまざまです。明確な理由を伝えてくれる団体もあれば、「総合的に判断した結果」という回答にとどまる場合もあります。理由が分かれば改善につながることもあるので、丁寧に尋ねてみることをお勧めします。

Q6. ひとり暮らしでも里親になれますか?
A. 条件が厳しくなることはありますが、不可能ではありません。「留守番時間が長すぎない」「緊急時に代わりに世話を頼める人がいる」「経済的・時間的余裕がある」などが確認のポイントになります。一人暮らしを不可条件としている団体もある一方で、状況をヒアリングした上で柔軟に判断する団体もあります。

Q7. 保護犬を迎えるのにかかる費用は総額いくらですか?
A. 譲渡費用(無料〜6万円程度)に加え、迎えた直後の初期医療費(歯石除去・手術・ワクチン等)が別途数万円〜十数万円かかることがあります。その後は年間平均約41万円(月約3.4万円)の飼育費が継続してかかると見込んでください。初年度は特に出費が重なりやすいため、ある程度の貯蓄があると安心です。